小沢 恭一郎

本実験では、phiのe+e-崩壊の不変質量分布を5MeV/c^2の分解能で測定 するためには、運動量を0.2GeV/cから2GeV/cの領域で、0.8%以下の分解 能で測定しなければならない。

運動量分解能は、磁場の強さ、測定領域の物質量、Chamberの位置分解 能などで決定される。本スペクトロメーターでは、中心磁場0.78Tを実現 する予定である。この時、CDCに対して0.78Tの磁場中で粒子の飛跡に対し て横方向に200 μm の位置分解能持つことと物質量を0.0035 Radiation Length以下にに押さえることが要求される。

2粒子のopening angleの分解能は、Chamberの縦方向の 位置分解能に よっている。このため、縦方向には、2mmの位置分解能が要求される。

さらに、Dalitz decayから来るelectronによるback groundを押さえる ために、tracking のあと 不変質量分布を求め、Dalitz massの領域にい るpairをcutする。このため、後方でもtrackingする必要がある。そこで、 CDCには、円周方向に±12度から±132度、縦方向に±21.8度(0.4 rad)の acceptance が要求される。

詳しい性能を表にまとめておく。

要求される性能を実現するため、 図のような デザインを行った。合計10層のドリフト層を持つチェンバーとなっている。

動径方向に10層のドリフト層を3つのグループに分け、内側(3層)、中 央(4層)、外側(3層)として配置する。10層のうち4層は、ワイヤを斜めに 張り(stereo層)、縦方向の検出に使用する。

内側のグループの3層は、x-x'-stereoの順番で配置する。

中央のグループの4層は、stereo-stereo'-x-x'の順番で配置する。

外側のグループの3層は、stereo-x-x'の順番で配置する。

さらに、このチェンバーの大きな特徴として、配線パターンをエッチング したセラミック製のエンドプレートを使っている事が上げられる。これに より、大型チェンバー製作時の大きな問題であった、配線手順の複雑さを 簡易化し信頼性を高めることが可能である。セラミックエンドプレートの 使用は、過去にTRISTANのTOPAZ vertex chamberの例があるが、配線パター ン付のプレートを使用した例は、日本ではじめてである。さらに、このよ うに大きなチェンバーに使用した例もはじめてである。

しかし、現在セラミック製プレートの大きさには限界があり、すべてのア クセプタンスを覆う大きさのセラミックを作成することは困難である。そ のため今回のチェンバーでは、全体のフレームを、アルミでリブ状に構成 し、そこにセラミックプレートを嵌め込む形で使用する。図の円周上に並 ぶ四角い部分にセラミックが嵌め込まれている。アクセプタンス全体を覆 うために、セラミックプレート相互の間のアルミの部分には、従来と同じ 方法でワイヤを張った。

また、一次ビームを使用するため、interactionによるcounting rateの高 さなどが心配される。実際には、10^7/spillのinteraction rateに耐え得 るチェンバーの設計が必要である。sense wire当りのcounting rateとし ては、前方15度付近では、半径50cmのところで、0.5cmの drift length ±0.5 cm(有感領域1.0cm)としてシミュレーション計算をすると30kHzの counting rateがあるが、chamber operation上問題がない量である。

さらに長期に渡って安定した性能を出す必要があるため電荷の増幅率は、 1.0*10^4程度であることが重要である。

また、アクセプタンス外の有感領域を減らし、counting rateを減らすため にフレームはすり鉢状に構成している。これにより、内側のワイヤ長は、 外側の約半分となっている。