磁場測定(under construction)

- 武藤 亮太郎 -

以下の記述はすべて下図の座標系による。

                   |
    ________________________________       Vz                 x
   |          /    |    \           |      ^                  ^
   |         /     |     \          |      |                  |
   |        |      |      |         |
   |        |      |      |         |      ◎ -> Vy           ◎ -> y
   |         \     |     /          |    Vx                  z
   |          \    |    /           |
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
                   |
                  beam
 
目次
  • 測定器の位置の再現性

    1998/9/10(木)測定の結果
    y軸方向 : 誤差 0.2-0.3mm
    z軸方向 : 往復させているうちにどんどんずれて、2往復で 2mm 程度の誤差
    しかしセンサを用いて原点を調節し直すと、
    ずれが 0.2mm 程度にもどる。
    実際の測定では z 軸方向には一度しか動かさないので、
    誤差 0.2mm程度 と思ってよいだろう。

  • 測定器の原点の位置精度

    後で述べる。

  • 測定器の原点を ( 0, 0, 0 ) としたときのpolepiece中心の位置 ( x, y, z )

    • 第1回測定
      	      for Vx   ( x, y, z ) = (2647.8 , 993.0 , 362.9 ) mm
      	      for Vy                 (2647.8 , 993.1 , 361.05) mm
      	      for Vz                 (2645.2 , 993.0 , 361.9 ) mm
      	      
    • 第2回測定
      	      for Vx   ( x, y, z ) = (2648.3 , 1603.0 , 360.95) mm
      	      for Vy                 (2648.3 , 1603.1 , 359.1 ) mm
      	      for Vz                 (2645.7 , 1603.0 , 359.95) mm
      	      
    • 第3回測定
      	      for Vx   ( x, y, z ) = (2385.8, 1639.0, 677.9) mm
      	      for Vy                 (2385.8, 1639.1, 676.0) mm
      	      for Vz                 (2383.2, 1639.0, 676.9) mm
      	      
  • 測定器の位置精度、ホール素子の測定精度を含めた測定誤差

    map_007.dat と map_007_saigen.dat を用いて
    2回の測定でのVの差の大きさが どれほどになるか調べた。
    (NMRと温度による補正はしていません。)

    結果 : 誤差 最大で 0.95% 程度。
    誤差の絵 1 ( 0 , 0 ) がmagnet中心。縦軸 %
    誤差の絵 2 ( 0 , 0 ) がmagnet中心。縦軸 mV。 x100でほぼgaussになる。
    同じ領域での磁場の大きさ (0,0)がmagnet中心。縦軸 mV。 x100でほぼgaussになる。

    磁場が一番大きいところではなんとか 0.1% 程度におさまっている。
    Bdl に直せば、0.1% 以内におさまることを期待している。
    (まだ Bdl に直すのはやっていません。)

    最大で誤差が0.95%にまで達している部分があるが、これは ホール素子ホルダーのレールの切目によって、ホール素子が大きく 回転してしまっていると予想される部分と一致している。
    つまり、レールの切目によるホール素子の回転には、各回で0.95%ほどの ずれがあることになる。 これは、以下に述べるような、ホール素子の傾きに対する補正を掛けても、 0.95%ほどの誤差は残るということを意味する。 しかし上にも述べたように、Bdl に直して考えればこの誤差は 致命傷にはならない。

  • ホール素子の傾きに対する補正

    ホール素子の傾きは x に依存していると考えられる。 以下のようにしてその x 依存性を調べた。

    map_007 は z = -12.9 mm の面を、map_008 は z = 37.1 mm の面を測定している。 この二つの面を linear に補間して z = 0 の理想中心面での Vy, Vz を求める。 この Vy, Vz は 0 であるべきだが、実際はそうなっていない。 そこで、この Vx, Vy を 0 からずらせているのはホール素子の 傾きであると仮定すれば、ホール素子の傾きの x 依存性がわかる。
    このような方法でVy, Vz を補正すると、Vy, Vzの変化がなめらかになり、 測定磁場値と計算磁場値の一致がよくなることがわかっている。

    ただし、この方法でわかるのはVy, Vzを測るホール素子の傾きであって、 main component Vx を測るホール素子の傾きはわからない。 しかし、3つのホール素子の相互の傾きは変化しない。 よって、main component Vx の傾きの x 依存性は求めることができる。 不定として残るのは傾きの offset のみである。

  • ホール電圧と磁場との関係

    polepiece の中心に NMRプローブをはりつけ、そのほぼ真上 10cm程度 離れた地点にホール素子を持っていき、マグネット電流を0[A]から徐々に 増やしていった。
    NMR の示す磁場の大きさ B[mT] とホール電圧 V[mV] を測定し、 BとVとの関係を3次関数でfitした。結果は次の通り。

    B[mT]=a + b*V + c*V^2 + d*V^3 ( V : [mV] )
    a : -0.616637
    b : 10.0484
    c : -0.00816915
    d : 3.09773 e-5

    なお、ホール素子とNMRプローブが上下に10cm離れていること、また NMRプローブの設置点の水平方向の誤差による影響はTOSCAによる数値計算で 補正されている。
    (水平方向の位置のずれは全く無視できるが、垂直方向に ほぼ10cmずれていることにより、約0.1% NMRプローブの位置とホール素子の 位置で磁場の値が違うことがわかっている。この違いは補正済である。)

  • 磁場計算 (2次元。φ対称性を仮定している。)
    • 方法
      poisson
    • 測定との比較
      図1

      • 縦軸 : (測定Bz(補正値)-計算Bz)/測定Bz、横軸 : r[mm]
        (Bz(補正値)=Bz+0.015Bx+0,015By:前後/左右対称性から出した値)
        5本の線はうえから zoffset=350/364.8(太い)/380/385/400[mm]


      • 縦軸 : (測定Bz(補正なし)-計算Bz)/測定Bz、横軸 : r[mm]
        上と比較すると Bzへの補正の効果がわかる。

      図2

      • 縦軸:磁場[T]、横軸 : r
        1.は 差のratioだったものを 実際の値でかいただけ。
        線は6本。太いのが Bz測定値[T]。
        細いのがうえからzoffset=350/364.8/380/385/400[mm] 、としたときの 計算値。

        計算値がまだ ガタガタしているのもみえます。(田原さんのNo4)
        (補足 : 350についてだけ、田原No3です。 計算磁場の値が不連続です。 (No3の仕様です。)
        他は No4です。値は連続であることがわかります。 (微分は不連続みたいだけど。))


      • 縦軸:磁場[T]、横軸 : r[mm]
        上と同じで、 rを1600mmまでplotしたもの。

  • 磁場計算 (3次元)
    • 方法
      TOSCAによる有限要素法。ただしビーム軸に対する左右対称性を 仮定している。左右非対称性は、左右対称性を仮定しない TOSCAによる計算によって、Bdlで約0.035%と求められている。 これは無視できる値である。

    • 測定との比較
      polepiece 表面から 90.6mm 上方、 beam 位置からの距離にすると 362.9mm の map_000 平面 ( 磁場測定を行った平面のうち 最も polepiece に近い面 )で、Vx 成分について 計算値 - 測定値 をプロットしたものを 図3 に示す。
      図3 : 注) この図は最新の計算磁場を用いていない。 磁場のずれの様子を示すためにここにあげてあるだけである。

      このずれの原因として考えられるのは、以下のものである。

      1. 計算で使う BH-curve が違う
      2. 測定位置のずれ
      3. ホール素子の傾き
      4. 計算の Mesh size による誤差
      5. 計算の Far Field Boundary 問題 -> 全然効かなかった。

      これらを取り除くための戦略を以下に記す。

      • 計算の Mesh size による誤差
        定量的に評価していないが、Mesh sizeを大胆に大きくしても ほとんど計算値に変化がなく、Bdlに直せば全く無視できる 変化であるため、これによる誤差はほとんどないと 考えている。

      • 計算で使う BH-curve が違う
        これも定量的に評価していない。 正しいBH-curveは本物の鉄を測らないと手にはいらないが、 BH-curveをかなり大胆に動かしても計算値の変化は さほど大きくないのでとりあえずおいておく。

      • 測定位置のずれの影響
        polepiece に近い位置での磁場は大きな位置依存性を示す。 map_000 面上で、測定位置を x, y, zの各方向に 1mm ずらしたときの磁場の変動を表わす図を図4に示しておく。 最大約 1% 程度の変化があらわれていることが分かる。
        左上 : もとの値 - x軸方向に -1 mm ずらしたもの
        右上 : もとの値 - y軸方向に -1 mm ずらしたもの
        左下 : もとの値 - z軸方向に -1 mm ずらしたもの ( 全て縦軸は [ gauss ] )
        図4

        一方、beam 位置に最も近い map_007 平面 ( beam 軸から -1.29 mm ) においては、測定位置のずれはそれほど大きな 磁場変動を与えない。図5 に 図4の map_007 version を 示しておく。
        図5

        ここで 図3 の断面を見ると、明らかに測定位置が -x 方向に ずれているときと同じ形の誤差が出ている。 また、y, z 方向の測定位置の ずれもありそうな気配を漂わせている。(図3 と 図4 を 比べてみてください。)
        そこで、明らかに測定位置のずれだと思われるものを、 磁場の計算位置をずらすことによって取り除く努力を してみた。
        この時、磁場の測定位置がずれているとすると、 前述した「ホール素子の傾きに対する補正」で用いた z=0 の 理想中心面もまたずれるということに注意する必要がある。
        つづく…

      • 絶対値の再現性
        ( x, y, z ) = ( 0, 0, -12.9 )[mm] において 0.8 % 計算の方が測定より大きい
        ( x, y, z ) = ( 0, 0, -362.9 )[mm] において 1 % 計算の方が測定より大きい

      • 計算値の前後左右対称性
        ( x, y, z ) = ( 1600, 0, 0 )[mm] と ( -1600, 0, 0 )[mm] で 約 1350 gauss に対して 1.43% ずれる
        ( x, y, z ) = ( 0, 1600, 0 )[mm] と (0, -1600, 0 )[mm] で 約 1040 gauss に対して 0.41% ずれる

        Bdl にしてどれほどずれるのかはまだ計算していません。


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Last modified: Sun Jan 9 02:00:09 2000